徒然すぎて草。

ねだるな、勝ち取れ、さすれば与えられん

終末のイゼッタから見る、オカルト戦争・WWⅡ

2016年も終わりが近づき、アニメも1つのクールが終わりを迎えています。

今期は個人的にドストライクなモチーフの作品が散見され、

非常に楽しいクールでした。

なかでも注目していたのは、

「終末のイゼッタ」と「オカルティック・ナイン」。

今回は最終話を迎えた「終末のイゼッタ」のモチーフとなっていた、

第ニ次世界大戦のオカルト的側面について少しお話したいと思います。

この記事を機に、オカルト的な分野に興味を持っていただけたら幸いです。

 第二次世界大戦は別名・オカルト戦争

終末のイゼッタは第ニ次世界大戦期のヨーロッパのパラレルワールド

描いた作品であるということは、皆さんもお気づきでしょう。

作中のゲルマニア帝国の元ネタとなった、

ドイツ第三帝国から端を発したこの戦争は、

様々な近代兵器が投入された総力戦の様相を呈していました。

その一方で、アドルフ・ヒトラー率いるナチスは、

オカルトの分野にも傾倒して、様々な研究探索を行っていました。

サブカル的な噂レベルなら、聖書にしるされた聖櫃(アーク)聖槍の探索、

(これらのモチーフはペルソナ2罪でも出てきました)

山地の奥深くに建てられた寺院に集まり、黒い太陽を祀るSS隊員の儀礼など。

(黒い太陽というと、ローマ神話の農耕神であるサトゥルヌスが思い当たります)

彼らがどこまでオカルトを本気で信じていたかは、

その資産のオカルト方面への浪費ぶりで伺えるというものです。

そうした側面から、現代にいたってもヒトラーが秘密裏に組織していた

「最後の大隊(ラスト・バタリオン)」が終末に復活するといった

お話まで創作されるようになったのも半ば当然と言えましょう。

 

彼らの研究の多くは実を結ばなかったか、実戦投入されることはありませんでしたが、

ごく一部、マインドコントロールの手法などはいくらかの実をつけたようです。

「終末のイゼッタ」でゲルマニア帝国が、

イゼッタに始まり、ゾフィーのクローン作製に至るまで、

「魔女」に関わる研究開発を行っていたのは、

ナチスのオカルト研究が元になっているのは間違いないでしょう。

(もっとも、あの作品世界でゲルマニアが保持していた科学技術も、

現実の歴史より遥かに高度なもののようでしたが)

 

実を結ばなかった研究の数々がある一方で、第二次世界大戦において

ナチスが利用しまくり、後にイギリスが対抗策を講じたオカルト分野があります。

それは、占星術

ナチスは「カール・エルンスト・クラフト」という天才占星術師を宣伝局に招き、

彼の予知能力をプロパガンダや作戦の指揮に活用していました。

(もっとも、ナチスは「良い結果」を求めて嘘の予言をするようクラフトに強要し、

そのことが彼を苦しめたようですが)

一方、イギリスも「ルイ・ド・フォール」という天才占星術師や、

かの有名な「アレイスター・クロウリー」を招き、(召喚獣……ウッ)

オカルト的作戦を展開しました。

(当時の英首相チャーチルが発祥とされる「Vサイン」は

アレイスター・クロウリーが考案した悪魔のサインとする説もあります)

星読みによって、ドイツ軍がどこへ展開するかを予知する試みに始まり、

果ては「ドイツの命運に影が差している」という文書をドイツ国内にばら撒いて

国民の士気をくじくといった工作まで、数々のオカルト的作戦が展開されました。

(この工作はかなり効き目があったらしく、

後にナチスはオカルト禁止令を出しています)

 

このオカルト的作戦に個人的な見解を述べるなら、

イギリス側が占星術で敵軍の出てくる位置を予想した、というのは、

ドイツとイギリス双方が占星術を使っていたが故の現象なのだと思います。

これを説明するにはオカルトのままだと分かりにくいので、

金融市場のコンピュータを例にとります。

金融市場の取引の多くはすでに機関投資家の有するスパコンによって

行われていますが、このスパコンたちは時に、

「一斉に同じ判断を下し」、株価市場を大きく歪ませる場合があります。

では、なぜ「一斉に同じ判断を下す」のかといえば、

スパコンは儲けを出すために組まれた各々のルーチンに従って動いており、

一定の条件が揃うと同じ判断を下してしまうからです。

現状、株式市場での利鞘を目的とした裁定取引が成立するのは

各々のルーチンに組み込まれた情報に格差があるからですが、

ここで仮に、世界全ての金融取引コンピュータが、

全ての情報(株価だけでなく、天気、政治、軍事、隣のあの子の下着の色まで)

を網羅して同じスペックで、儲けを出すことを目的に稼働した場合、

コンピュータの出す答えは全て同じものになるでしょう。

(もっとも、この場合は裁定取引が行われないので儲けは出ませんが)

占星術の世界もこれと同じで、

ドイツ・イギリス双方の有する占星術師が

同じスペックを持っていて、同じだけの体系的知識を持っており、

「ドイツ軍の勝利を狙う」という同じ目的を持って

予知を行えば、導き出される答えは必然的に同じになります。

ちょっと分かりにくかったですかね。

要約するなら、同じ知識と思考回路と目的を有していれば、

相手の思考の先読みが可能だってことですね。

 

終末のイゼッタという作品そのものはどうか

この作品をまとめるなら、

WWⅡに内包されたオカルト面を

イゼッタ(とゾフィー)というキャラクターに託して描いた物語

である、と言えるでしょう。

キャラクターにしやすい魔女というモチーフを選んだのもそのためで、

これがオカルト全般にまで広げると、キャラが増えすぎて

1クールで収めるにはとても足りなかったでしょう。

そのため、魔女に絞ったのは名采配だと思います。

 

魔女の扱いに関してもエイルシュタットとゲルマニアでは対照的で、

ゲルマニアはあくまで兵器・道具として扱っているのに対して、

エイルシュタット側は人間としての交流を最後まで貫き通しました。

しかし、当の魔女はといえば、

盲目的に人間を愛し、奉仕したという意味では、

イゼッタもゾフィーも大差ありません。

劇中でこれでもかというくらい描かれた(気味が悪いとすら思いました)、

フィーネへのイゼッタの忠誠・献身は言うまでもなく、

最終話のゾフィーのセリフ、「あんなに愛していたのに!」からも、

生前の彼女がどんな風に戦ったのかが伺えます。

おそらく、あの2人を決定的に分けたのは、

友としての愛情を求めたのか、

男女としての愛情を求めたのか、

そして望むものが得られたか、なのだと思います。

イゼッタとフィーネが友としてつきっきりであったのに対して、

ゾフィーはなにかと理由をつけて愛され切ることがなかったんじゃないかなと。

ゾフィーを受け入れるということはつまり、王と結婚するということですので。

(こうして見ると不倫相手に離婚を迫る二番目女みたいだな、ゾフィー

魔女と結婚するというのは最終話で言及された「教会」の教義からしてアウト。

当時のエイルシュタット王に、

離婚するためだけにカトリックから袂を分かち、イギリス国教会をぶち立てた

ヘンリー8世のようなガッツがあればよかったのですが、

残念ながらそれは出来ず。

(本当にキリスト教徒は余計な真似しかしない世界最凶のカルトだな)

最終的に、男に捨てられたゾフィーは数百年の怨讐を伴った

マジカルメンヘラとしてエイルシュタットに牙を剥くわけですが、

いざ目覚めてみれば、そこには自分と同じ立場にあるにも関わらず

自分の欲しかったものを持っているイゼッタ。

そりゃあ、ああなりますよ。ブチギレますよ。

キラキラした目の過去の自分を否定し、復讐を遂げるためには、

兵器として利用されようが何だろうが、イゼッタと戦うほかなかったのですな。

 

タイトルである「終末のイゼッタ」、

なにが終末なのかというのもちゃんと回収され、

オカルト・ファンタジーはおとぎ話として彼岸へ渡るという

「コンクリート・レボルティオ」的エンディングを迎えたのも、

収まるべくして収まった物語であると思います。

 

ここ3ヶ月、楽しませていただいた製作スタッフの方々に感謝を。